デュロシェDuroche進化し続けるジュヴレ・シャンベルタンのスペシャリスト著名生産がひしめくジュヴレ・シャンベルタンにて、絶好のロケーションを誇る畑から密やかにワインを手掛ける生産者がいる。4代目のピエール・デュロシェが父親のジルとともに切り盛りするドメーヌ・デュロシェである。ジュヴレ・シャンベルタンだけに畑を所有する、いわばこのアペラシオンのスペシャリストであり、3つのプルミエクリュと4つのグランクリュを擁する8.5haの畑には最高樹齢90年の古樹も現存し、ドメーヌの歴史の長さが感じられる。 代々ブドウ栽培家としてブドウやバルクワインをネゴシアンに売っていたが、1933年にできたワインを試飲したところ「これは瓶詰めする価値がある」と思い立ち、当時のブルゴーニュの小規模生産者としては異例のドメーヌ元詰めを開始。以来、個人のワイン愛好家や地元のレストランから愛される優良生産者としてドメーヌのワインを世に送り出してきた。また一方では、ネゴシアンにブドウやワインの供給も続けており、その中には一流生産者のワインしか買わないことで知られるルシアン・ル・モワンヌや、ロベール・アルヌーを率いるパスカル・ラショーの名も含まれている。 特にビオロジックやビオディナミの認証は求めていないが、周囲の環境に配慮した節度あるブドウ栽培を行っている。ブドウが地中深く根を伸ばせるよう、除草剤を使用せずに土を掘り起こし、湿気がこもってブドウが病害に侵されないよう、除葉を行い、収量も厳しく制限する。醸造においては、ステンレスタンクにて自然酵母で発酵。自発的な発酵開始までの数日間は自然な低温浸漬のような状態になるため、デュロシェの魅力である優しい香りとピュアな果実が引き出される。 代々受け継いできた伝統のワイン造りから生まれる彼らのワインには、果実の豊かさとジュヴレの柔らかさが満ちている。「メディアに出すと古くからのお客さんへのワインが減って迷惑がかかる」と、決して華々しい表舞台には立とうとしない造り手だが、飲む人の顔が見える取引を大切にする実直な姿勢と味わいから口コミで評判が広がり、注文が引きも切らない。毎ヴィンテージ、取引の長い顧客にのみ販売されるため、現地でも目にする者が少ない、知る人ぞ知るこのジュヴレのドメーヌに対し、クライヴ・コーツは「追う価値のある蔵だ」と評し、ティム・アトキンはヴォギュエやフーリエと同格の4.5星評価を与えている。 |
デュロシェ Duroche
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