世代を超え継承される魂─フリードリッヒ・ベッカー醸造所にて
こんにちは!ドイツ担当の瀬尾です。今年5月、念願のドイツへ行ってまいりました!そこで出会ったのは、ワインの背景にある人と土地の物語。現地での感動を訪問記&ワインフェアで皆様にお伝えします!
ファルツの最南端、シュヴァイゲン村。国境を越えたその先、フランス・アルザス地方にまで広がる畑を持つのが、フリードリッヒ・ベッカー醸造所。訪問の案内をしてくれたのは、豪快で陽気、でもどこか真面目で茶目っ気のあるベッカーJr.さんでした。
醸造所内のテラスでハムとマッシュポテト、ザワークラウトのランチをいただいたあと、車で向かったのは、なんと国境を越えたフランス・ヴィーゼンブールの街。実はベッカー家の畑の多くはフランス側にあります。



うっとりしてしまうほどの美しい畑たち
「この街で一番うまいパティシエなんだ」と連れて行ってもらったショコラティエでお土産を購入。なぜかベッカーさんのスマホで集合写真を撮影されるという謎の展開に、笑いが止まりませんでした。
その後は、かつて地域を守る砦があった丘へ。先の大戦で破壊されてしまい今は石碑が立っています。東西南北に存在した砦ですが、その一角、ザンクトパウルには今も石造りの美しい住居兼砦が残っていて、「まるでジブリの世界みたい!」という声があがるほど幻想的。現在はベッカーさん一家が住まわれており、息子さんもこの地で育っています。
案内されたカマーベルクは、ふかふかの土とカバークロップが茂る特級畑。石がちな土壌は、じっと目をこらすと畑の歴史と呼吸が聞こえてくるよう。
「これが怠け者ベッカーの畑だよ(笑)何もしていないように見えるかもしれないが、土地のエネルギーを最大限に生かす方法をとっているんだ」
そう語るベッカーさんの言葉には経験と信念に裏打ちされた深みがあります。
この畑で飲んだ2006年のカマーベルク・ピノ・ノワールは、ザンクトパウルの女性的な繊細さとは対照的な、艶やかでリッチな力強さをもつ1本でした。



過去を敬い、未来へつなぐ
印象的だったのが、彼の口からたびたび出てきた、「先代への感謝」「次世代のために何を残すか」という言葉。
「祖父の時代に当たり前だったことを、ただ取り戻してるだけなんだ」
その言葉には、過去を守りながら未来を拓く覚悟が感じられました。
帰り際、まだ小学生の息子さんがベッカーさんのお手伝いをしている姿に、ふと「もう始まっているんだな」と胸が熱くなりました。
きっと彼がこの土地でワインを造る日が来るのでしょう。



果実のエネルギーが堂々と放たれるような力強さ。でも決して荒々しくはなく、品格のあるバランス感。飲む人を圧倒するような存在感と、心を震わせる静けさを併せ持つ、「威厳」すら感じさせる味わいを、ぜひお試しください。
今回ご紹介するワインは…

「白ワインではシャルドネに最もポテンシャルを感じている」というワイナリーが誇る白のトップキュヴェ!なんとドイツの代表的なワイン誌Falstaffの「シャルドネ・トロフィー部門」において、全ドイツ産シャルドネの中でNo.1を獲得(2018ヴィンテージ)しました!2019年は果実の充実感や甘いニュアンス、余韻に押し寄せるミネラル感が素晴らしい味わい!比較試飲したなかで一番お気に入りだったVTGです。
表土が薄く、年代の古い希少な石灰岩土壌の畑に植わる古樹のブドウを使用しているため、非常に低収量。クラシックなブルゴーニュスタイルのシャルドネで、樽発酵の後、新樽100%で15カ月間熟成されます。新樽100%とは思えないほどにしっかりと溶け込んだ樽感、そして名前の通りの超硬質なミネラル感がスケールの大きさを感じさせます!