世界を見据えた圧倒的実力―リングス醸造
こんにちは!ドイツ担当の瀬尾です。今年5月、念願のドイツへ行ってまいりました!そこで出会ったのは、ワインの背景にある人と土地の物語。現地での感動を訪問記&ワインフェアで皆様にお伝えします!
バーデン地方をあとにして、車で北上。なだらかな丘が連なるファルツ地方へと足を運びました。この地に、「フーバー」「ベッカー」「フュルスト」といったドイツ屈指の生産者が口をそろえて賞賛するワイナリーがあります。それが、リングス醸造所。
運営するのは、兄のアンドレアス(アンディ)さん、弟のシュテファンさん、そして長女のシモーネさん。まさにファミリー一丸で挑む、注目の生産者です。

おしゃれなワイナリー


土地を厳選し、理想を追求する畑づくり
リングスの強みは、ファルツでは希少な石灰岩土壌を持つ畑の数々。かつて両親が協同組合にブドウを販売していた畑を引き継ぎ、良い区画だけを残して残りは売却。その資金で、一級格・特級格の優良区画を手に入れました。
訪問した日は、アンディさんの39歳の誕生日!お祝いムードのなか、ご本人が車で畑を案内してくださいました。
- ザウマーゲン:穏やかな丘陵地に広がる特級畑。リースリングは12のパーセルに分けて仕立てられ、なかでもクライト区画は、涼しくエレガントなスタイル。
- シュタインアッカー:石灰岩が露出する畑。高密植で、一級格のなかでも特に優れた区画。
- ヘルゼンベルク:谷間に位置し、ファルツの森からの冷気が吹き込む冷涼な畑。超高密植で、収穫はザウマーゲンより1週間遅れ。
どの畑にも共通するのは、石灰岩由来のミネラル感と、冷涼な気候が生む繊細な酸。地形と土壌の持つポテンシャルを最大限に生かす工夫が凝らされています。
リングスでは、畑ごとの個性を明確に表現するために、小さなステンレスタンクを多数配置。ピノやリースリングは、区画ごとに別々に仕立てられます。さらにはカベルネ・フラン用のアンフォラも完備。
熟成庫では、樽の下に湿気対策として石を敷くという細やかな気配りも。なんど収量に合わせて特注樽をオーダーすることも。まさに“畑に合わせたワイン造り”の真骨頂です。



テイスティングと、思いがけない名シーン
試飲は、ただただ衝撃の連続。
ピノ・ノワールとリースリングの完成度の高さに、参加者一同、言葉を失うほど。リリース当初から飲んでいる参加者は、「前からすごかったけど、どんどん進化している!」と目を見張っていました。
個人的に印象的だったのがリースリング。高級な緑茶のような、甘露のような何とも言えない美しい香りがあり、癒しと高貴さが同居する味わいでした。
テイスティングが終わると、アンディさんが満面の笑みで一言。
「さあ、仕事は終わりだ!飲むぞ!」
そうして始まった誕生日パーティーには、なんとユリアン・フーバーさんも登場!リングスのピノを前に、真剣に語り合うアンディさんとフーバーさん。その姿を写真に収めながら、ふと思いました。
——「この光景、たぶん歴史になるな」と。



ドイツのピノ&リースリングの中でもトップクラス。
リングス醸造所は、まさに“進化を続けるドイツワインの象徴”。情熱、哲学、そして土地への愛が詰まったワインたちは、飲むたびに心を打ちます。
ファルツにこんなに凄い生産者がいる——
そのことを、もっと多くの人に知ってほしい。そう強く感じた訪問でした。
今回ご紹介するワインは…

ベーシッククラスのリースリング。大樽で発酵・熟成させており、リースリングでは珍しくマロラクティック発酵を行っています。
白い花々や果実、カモミールや甘露のような芳しいアロマが広がります。残糖ゼロのドライなリースリングですが、マロラクティック発酵を行なっているため、丸みのある柔らかな口当たりと、どこか妖艶さを感じさせる奥深い味わいに仕上がっています。