コート・デ・ブランのヴェルテュに本拠地を構えるパスカル・ドケ。
1995年から2003年までは父から受け継いだドメーヌ・ドケ・ジャンメールを家族で経営していましたが、妹から分割相続していた畑を購入し2004年に自身のドメーヌを立ち上げ、「ドメーヌ・パスカル・ドケ」と自らの名前を冠して独立しました。

「以前から有機栽培に興味があり、リュット・レゾネを始めていた。しかしテロワールがもつ特徴を全て表現するためには“ビオロジック農法”での栽培が必要だった」。

2010年ビオロジック栽培の認証（AB）取得
独立して他の制約を受ける事がなくなったパスカルは、直ぐに全ての畑をビオロジック農法に転換。2001年には除草剤の使用を一切撤廃。畑の状態が安定するのを待って申請を行い、2010年にはビオロジック認証を取得しました。ドケでは、パスカル氏の親が所有している畑と、パスカル氏が所有する畑があります。2名が所有する畑の合計は8.69haで、父側の所有権の関係でRMにはなりません。しかし、全区画の栽培はパスカル氏が全てしており、実質RMと同じ哲学で栽培を行っています。

植物層との共存による複合的なビオトープの形成
パスカル氏は、土を耕し土壌を健全に保ち、必要な植物を共存させることでブドウ樹とのバランスを取る事が重要と考えます。
2001年に除草剤の使用を止めてから、表土にしか張っていなかった根は、2年後には40センチ地中に張り、2006年にはさらに地中深くまで行き届くようになったと語ります。
パスカル氏の畑にはハコベやウマゴヤシなど、現在数種類の植物が共存し、土壌を活性化させると同時に、ブドウ樹と自然界の生態系がバランスよく補完し合う栽培方法を取り入れています。
複合的なビオトープの形成は、結果、銅や硫黄の使用を削減する事に繋がります。トラクターは、軽量で燃費の良い円盤耕作機を使用。土が流れないよう、あまり深くまで耕しません。

緻密な畑作業に裏打ちされた熟度の高いブドウ
乾燥した年は表面の雑草の根を切り、ブドウに水分が行き渡るようにしています。こうしてその年の天候などにより適宜耕作方法を工夫し、パスカル氏の畑はフカフカの生きた土壌が作られています。 ドメーヌでは、樹液がブドウ樹全体に行き渡るような仕立てを行い、また、ヴィエイユ・ヴィーニュを大切にする為にブドウ樹がゆっくりと成長できるようにバランスを取っています。
収穫近くになると毎日パスカルがブドウを食べ、味覚で確認。完熟するのを待って収穫します。その為、潜在アルコール度数は11.5度を超えます。
ブドウ栽培北限のシャンパーニュ地方ではシャプタリゼーションは必須ですが、ドメーヌ・ドケでは異例のごとく、2001年を最後にシャプタリゼーションは行っていません。

発酵漕および熟成容器の追求
ドメーヌでは、ワインの約2/3は、ステンレスタンクよりも還元的なアロマが発生しにくいエナメル・スチール製タンクで、1/3は主にヴィンテージ・キュヴェに使用するワイン用にオーク樽で醸造。
2017年には、石器製の600リットルの甕の使用を開始。さらに2018年にはドゥミ・ミュイ、2019年には20hlの大樽を導入。全ての目的はブドウが最大限、そのポテンシャルを表現できる熟成容器を追求しています。

永続的リザーヴワイン
ドメーヌでは、ソレラにヒントを得たVin de Réserve Perpétuelle（永続的リザーヴ・ワイン）を使用。毎年足しながら、収穫量トータルの1年間に相当する量を確保しています。
BIO認証を得た2012年から現在に至るまで10年以上の収穫年を毎年補填。キュヴェによって、45%以上と惜しげもなくリザーヴワインをブレンドする事で、ブドウが刻んできたテロワールの個性をより深く表現しています。